だいごのじまん


台湾建国百年記念
国立高雄第一科技大学内のtaji句碑を求めて


 

 1.いざ台湾へ

 昨年、「国民みらい出版」から「台湾建国百年記念行事として日本と台湾の文化交流促進のため、台湾の国立高雄第一科技大学に句碑を建立する計画がある。応募しませんか」との誘いがあった。私は日本百名山の白山で詠んだ「天空に一人佇み月朧」などを「藝術百家」(2009.7.1)に載せていた。同出版はその句を御影石に彫り台湾に運んで同大学キャンパスに建立してはと。台湾政府から補助があり費用は余り高くなかったので応募することにした。


taji 俳句

 「高雄国際詩文大会」除幕式が2012年6月8日に同大学で開かれたが、私は研究発表を数日後に控えていたので、8月21日(火)から3泊4日で台湾に行くことにした。
 午前9:10関空を出発した。快晴で種子島は見えたが、石垣島や尖閣諸島は見えなかった。11:05 台北桃園国際空港に到着した。時差1時間で飛行時間は3時間。1台湾ドル(元)=2.7円であった。(台湾銀行1万円=3,699元 手数料ゼロ)
 台北駅では38℃と暑かった。駅構内の高鐡(新幹線)切符売場で高雄(左営駅)までの切符を買った。座席指定は1,490元であるが、パスポートを見せ「シルバー」と言ったら半額の745元(2,200円)になった。日本ではジパング加入者(男65歳、女60歳以上)はJR150km以上の場合3割引(お盆、正月、ゴールデンウイーク除く)だが、台湾では65歳以上なら外国人も半額だ。往復切符(4,400円)は台北駅近くの華華大飯店の1泊分(5,330円)より安かった。
 ホテルに着いたらすぐに「高雄国際詩文大会」責任者の林根藤先生に電話した。「明後日の朝8:30の新幹線で高雄に向かう。11:00頃大学に着くのでよろしく」と。「駅からタクシーで来て下さい。台風が近づいている」と。「え!」日本に来る台風15号は報道され関心があったが、台湾を襲う台風14号には無関心だった。台風と聞いて新幹線は止まらないかと不安になった。


 2.国立高雄第一科技大学でtaji句碑に対面

 8月23日(木)8:30 高鐡(High Speed Rail)(新幹線)は台北駅を定刻に出発した。
  座席はガラガラであった。料金が高いのか、高雄に行く人が少ないのか。日本の東京、名古屋、大阪、岡山、広島、福岡という大都市が少ないのか。日本の新幹線のアナウンスに似て面白かった。Ladies & Gentleman This is Super Express …。電光掲示板には高雄Kaoshun29℃と。20分後トンネルを出たら凄い雨が降っていた。ヤバイ!次は台中駅。その間に富士山より高い雪山(3886m)が見えるのだが…。台中駅 何と晴れてきた。 9:55嘉義駅に着いた。東に阿里山(2190m)や台湾で一番高い玉山(3,952m)が見えるのだが…。山の方は曇って見えない。私は1999年阿里山に人気の阿里山森林鉄道に乗り訪れたが、2009年8月の台風以降運休、2014年6月に開通予定という。(日本統治時代の1912年開通、昨年100周年を祝う)。10:06 左営駅(Zuoyingツオイ)到着。日本の新幹線のように定刻到着だ。最高時速300kmで1時間36分、揺れもなく快適な乗り心地だった。


国立高雄第一科技大学

 駅前のタクシーに乗る前に「国立高雄第一科技大学までいくらですか」と聞いた。「300$」と。タクシーは高速に乗り随分走った。案の定大回りして逆戻りした。料金は415$と。ロータリーにいた人に「林根藤先生ですか」と聞くと赤い建物の方に走って行った。「詩文の道」にあるtaji句碑の写真を撮った。林先生が迎えに来た。林根藤日語学院教授は千葉大学で院を含め8年間日本の古典文学を勉強した。日語学院の事務室で林先生に、好きな地酒2本と千代の富士ファンというので相撲のTシャツ、そしてtaji句集「続たんぽぽ」と「季寄せ」を贈呈した。林先生は広いキャンパスを案内し、私の句碑の前で一緒に写真を撮ってくれた。日語学院の学生が通る「詩文の道」の両側には日本人の俳句が96、短歌や書を含め176の石碑が建立されていた。石碑建立には日語学院の学生も協力した。学生たちが日本や日本文学に興味を持ってくれたら嬉しいですね。


taji 句碑と林根藤教授

 台湾で二番目位の国立大学で学生数は7,000人、日語学院生(日本語)は500人で授業料は年15万円と安い。日語学院主任の呉春宜先生(京都大学博士号取得、一乗寺に住む)ともお話した。民主党政権の行方に強い関心を持っておられた。「国民の支持率は低く、秋の解散では大敗するであろう。自民党政権になってもリーダーがいないね。原発事故で廃炉になっても30-50年放射能汚染に怯えることになる。原発即時ゼロでは産業界が承服しないから長いスパンで原発依存度を下げていくしかないね」と流暢な日本語で話した。
 林根藤先生のお兄さんは台湾の登山ガイドだと聞き、富士山より高い東北アジア最高峰の玉山(3952m、日本統治時代は新高山と呼ぶ)に登る時は、是非お願いしようと思った。昨年秋に登ろうと思ったが、山頂に近い排雲山荘の改修工事は大幅に遅れていた。
 台風が来ているのに国立高雄第一科技大学では快晴(40℃)でラッキーだった。30分以上お話しタクシーを呼んでもらった。左義駅まで何と260元であった。前運転手は150元も遠回りした。MRT(都市鉄道)に乗り5つ目の高雄駅で下車した。25元(75円)と安かった。

 3.高雄の地下鉄 美麗島駅 「光のアーチ天井」

 高雄駅で一時預り所「行李房」の前を通ると日本の演歌が流れていた。台風の影響か雨が強く降ってきた。気温40℃湿度80%でムッとした。地下鉄美麗島駅に着いた。「光のアーチ天井」を見てびっくりした。イタリア人の絵を4500枚の赤、青、黄、紫のガラスで再現した世界最大級のガラス天井だ。作者はローマ生れで横浜市博物館などで個展を開いた水仙大師。


高雄美麗島駅「光のアーチ天井」

駅の改札口には「世界で2番目に美しい駅」と書かれ、有名な観光スポットとなり、結婚式前の前撮写真を撮っているカップルがいた。「水の都」高雄市内を流れる「愛河」付近の地下鉄駅通路には大きな絵画が5点程展示され、心豊かになる素晴らしい企画だった。日本統治下の1938年に建てられた帝冠様式建築が今は高雄市歴史博物館として活用されていた。
 MRTに乗るとミニ自転車を持ち込む女性がいた。中学校の職員で「ラッシュアワーでもOK、無料。あちらの普通の自転車は有料だ」と。英語が話せたので左営駅までいろいろ話をした。左営駅に着くと次の新幹線が18:30発。1時間早めて自由席で台北に戻った。

 4.「千と千尋の神隠し」 九ぶん

 九ぶんは昔、金の採掘で栄えた街で、映画「千と千尋の神隠し」で一躍有名になった観光地である。ホテルの人にバス乗り場を聞きMRT 忠孝復興駅で下車。バス停を探していると「1,000ドル(2,700円)でどうだ」と。運転手だった。すぐバスが来た。100元(270円)でタクシーの1/10だった。高速に入った。料金所はない。尖閣諸島に上陸した香港のギャング船が水分補給した基隆港が見えた。1時間10分で九ぶんに着いた。


「千と千尋の神隠し」ロケ地

 原作・脚本・監督の宮崎駿氏が「阿妹茶楼」などを訪れ作品のイメージを得たと言われる。同作品は2001年日本で初公開され、日本や海外でアカデミー(アニメ)賞など数々の賞を得た。外国語にも訳され海外で上映された。もう10年以上経つのに今なお人気があり、観光バスで九ぶんを訪れる日本人をたくさん見かけた。一本の映画が当たるとこんなにも影響があるのかと驚いた。これからの「日本戦略」の1つの手本になる。韓国がその先手をいっている。2年前に訪れた済州島(チェジュ)のロケ地がそうである。


 5.新北投の温泉地 「加賀屋」進出

 北投温泉はドイツ人が発見、戦前日本人が温泉旅館を建て発展した所だ。台北駅からMRTで北投駅に行き、乗り換えて新北投に。新線の電車の車体にはサザエさん風の漫画が描かれていた。台北から電車で40分と人気スポットである。別府の地獄池のような地熱谷に行く。熱風で30℃90%と蒸風呂サウナである。大学生に会う。一人は上海に留学した4年生、3人は台湾の大学生で内1人は高雄に住む女性だ。大学院に進学し、来月北海道に家族で温泉旅行に行くと。


新北投の温泉でオランダ人と

 「露天温泉浴池」に入った。入替制で13:30-16:00、40元(120円)と安い。湯風呂4つ、水風呂2つ、水着着用である。オランダから来た4人と話す。「ハーレムでホームステイをした」と言うとハーレム出身の女性がいた。「主人の名前はハーリンゲンと言いコンピューター関係の仕事。息子は小学校の教師で学校に連れて行ってもらった。35年前の1977年夏に訪れた田島だと伝えてほしい。温泉大好きなら、是非日本に来て! 世界一だよ」と言って名刺を渡した。
 新北投の温泉地に2010.12老舗旅館の「加賀屋」が進出した。「おもてなし」を大切に1泊2食2万元(5.4万円)と高い。近くの「熱海大飯店」はぐっと安かった。

 6.国立故宮博物院は凄い

 温泉に入った後、士林駅からタクシーで故宮博物院を訪れた。入場料は160元(480円)と安い。真っ先に人気の高い「翠玉白菜」(清時代)を見た。10cm程の翡翠にバッタとキリギリスの昆虫が彫られた精巧な作品で素晴らしい。続いて新石器時代から漢時代の土器や青銅器を見た。BC5000年〜BC1000年にこんな立派な作品が生み出されたとは中国の古代人の素晴らしい創造性に驚いた。18:30が閉館時間と思ったら、今日は20:30まで開館すると。夏の土曜日は夜間開放するとガイドブックには書いてあるが、今日は水曜日だ。ラッキー! 個々の作品を再度じっくり鑑賞し、2階の書画や清代までの陶磁器を十分楽しんだ。

翠玉白菜

 7.「台北101大楼」 VS 「東京スカイツリー」

 台北駅から市政府駅まで10分のMRTに乗る。切符はトークンで20元=60円と安い。市政府駅から徒歩15分の所にある「台北101大楼」。デジタル時代(101010)到来に合わせ設計を変更し101階ビル(509m)に。2004年に完成した時は世界一のビルに。
 入場料は450元(1350円)。待ち時間ゼロ。入口の5階(25m)から89階の展望デッキ(382m)までエレベーターで僅か37秒(東芝製、時速60km)と早い。最上階91階(390m)の展望デッキから見る夜景は美しかった。「台北101大楼」周辺を新都心と呼び、SOGO百貨店、三越、阪急、ユニクロなど日系企業がたくさん進出していた。
 一方、「東京スカイツリー」は634mで、ギネスブックに世界一高いタワーと認定され、2012年5月に営業を開始した。私は半年後の11月に上った。入場料(展望デッキ)は2,000円で待ち時間は55分と比較的短かった。地上350mの展望デッキまでエレベーターで約50秒(東芝製、時速36km)と台湾よりは遅かった。地上450mの展望回廊までは空中散歩。333mの東京タワーが小さく見え、富士山もかすかに見えた。
 共に魅力的な観光スポットとなり、多くの観光客を引き寄せる起爆剤となるであろう。

 8.太極拳、バイク、士林夜市

 早朝、ホテルに近い台北の二・二八和平祈念公園を訪れた。野外ステージや芝生などで数グループが太極拳をしていた。また、素足でツボを踏むと脳を活性化すると書かれた「健康歩道」では、はだしでツボを踏み歩いていく人、痛くてしゃがみ込む人…
  信号が青になると一斉に総統府(1912年日本統治時代の台湾総督府、1949年修復)前を駆け抜けるバイクの群れ… 2人3人乗りもOK、バイタリティ溢れる台湾を象徴する光景だ
 台北最大の夜市・士林夜市に行った。若いカップルが多く、賑わっていた。時折マンホールから熱風が噴き出し食欲が損なわれた。

総統府前を駆け抜けるバイク

 9.東日本義援金、WBC台湾チーム

 東日本大震災に対する台湾の義援金200億円(2011.7)は外国からの援助の中で最大であった。2013年3月8日第3回WBC2次ラウンドで日本対台湾の試合が東京ドームで行われた。試合は延長戦にもつれ込み4対3で日本が紙一重の勝利を収めた。試合は延長戦で11:45終了。テレビ局はこの後を放映しなかった。
 しかし翌日TVで、負けた台湾チームが試合直後ファンに対し深々と頭を下げていた。それは試合前、名も知らぬ人がツイッターで「震災での台湾からの義援金のお礼を横断幕やプラカードで伝えてください。台湾の皆さまへ改めて感謝のメッセージをおくる最大のチャンスです。日本と台湾の友情が永遠であることをWBCを通して伝えて下さい」と。
 私はツイッターというツールでこんなにも凄い感動を日本中の人に引き起こしたことに大変感動した。

 10.日台の友情 永遠に

 私は台湾を二度訪れた。日本の演歌が流れ、お年寄りが日本語で話しかけてきた。京都では、台湾のカップルが舞妓姿や着物姿で「ねねの道」を歩しているのを見た。洞爺湖温泉でも台湾の若いグループが打上花火を楽しんでいるのを見た。日本企業もたくさん台湾に進出している。ヤマハはバイクを日本では作らず、私の125ccバイクは台湾製である。コンピューターの中心部分は台湾で作っている。
 人的、経済的に結びつきの強い日本と台湾。宝塚歌劇団も「震災支援」に感謝しての初公演。元プロ野球大豊選手の長女も出演し、「熱烈歓迎」で台北国家戯劇院でのチケットは全日完売という。日本と台湾、今後ともいい関係が続くようにと祈らずにはいられない。

下鴨神社訪れた台湾女性に高雄大学のtaji句碑見せる